犬の肝性脳症に関する記述として適当でないのはどれか。

過去問

73回 A問題 問49

難易度:易

犬の肝性脳症に関する記述として適当でないのはどれか。
  1. 門脈体循環シャントが原因の一つである。
  2. 流涎がみられることがある。
  3. 高アンモニア血症が一般的に認められる。
  4. ラクツロースを経口投与または浣腸で用いる。
  5. 予防のために高タンパク食を給与する。

選択肢を吟味しよう!

重要度:☆☆☆
門脈体循環シャントが原因の一つである。

重要度:☆☆☆
流涎がみられることがある。

重要度:☆☆☆
高アンモニア血症が一般的に認められる。

重要度:☆☆☆
ラクツロースを経口投与または浣腸で用いる。

ラクツロースは、瀉下薬で便通を改善するために使用されることが多いです。

重要度:☆☆☆
予防のためにタンパク食を給与する。

タンパク質が代謝されてアンモニアになるため、
低タンパク食を給与させる必要があります。

解説

今回は、肝性脳症が主たる症状である「門脈体循環シャント」に関してまとめます。

門脈体循環シャント

門脈体循環シャント(PSS)とは、腸管と肝臓をつなぐ「門脈」が肝臓を経由せずに「大静脈」や「奇静脈」にバイパスをつくる血管異常をいいます。

PSSは、先天的と後天的(門脈高血圧に続発)、あるいは肝臓の実質内なのか外なのかに分けられます。概算で、PSS症例の約70%は、先天性、単一の肝臓外にシャントが形成されます。ちなみにですが、肝臓外シャントは小型犬、肝臓内シャントは大型犬で多いですよ。

ポイントは?

シャント血管によって2つの大きな弊害が起こります。

1つ目は「栄養素を肝臓に送れない」です。

単純に考えてほしいのですが、シャント血管によって栄養素が肝臓に運ばれてこないので、肝臓によって栄養を合成することができません。そのため、タンパク質である「アルブミン」「凝固因子」、脂質である「コレステロール」、「血糖値」が減少することになります。

凝固因子を作れないと当然「凝固不全(多くがAPTTの上昇)」を伴います。

2つ目は「代謝されるべき物質が全身循環に流れてしまう」です。

これこそが、神経症状(特に肝性脳症)の主たる原因なのですが、本来肝臓で代謝される「アンモニア(NH)」「総胆汁酸(TBA)」がこれにより上昇します。いずれも血液検査で測定可能です。

画像診断では?

レントゲンや超音波検査では、「小さな肝臓(小肝症)」「腎臓の両側性肥大」が見られるのが特徴です。残念ながらレントゲンには移りませんが「尿酸アンモニウム結石」ができやすいのもポイントの1つですね。

確定診断はCTになります。