GPCRを噛み砕く

まとめ

ポイント

GPCR(Gタンパク質共役型受容体)とは、細胞膜受容体のうちGタンパク質によって細胞内へのシグナルを伝達する受容体を示しています。

簡単な流れ

ここでは簡単にこの受容体の流れと役割を解説します。

まずGPCRにリガンドが結合します。このリガンドは、ファーストメッセンジャーと呼ばれます。全ての始まりです。

するとGタンパク質が酵素を活性化or 不活性化させ、cAMP,IP3(イノシトール三リン酸),DAG(ジアシルグリセロール),Caなどの濃度を変化させます。このGタンパク質によって増減する物質をセカンドメッセンジャーと呼びます。

合成されたセカンドメッセンジャーによって、遺伝子の翻訳調節であったりタンパク質のリン酸化などが行われ生体内の生理作用に大きく関わっています。

Gタンパク質には種類がある!

このGタンパク質には「Gi」「Gs」「Gq」などの種類があり、それぞれに違いがあって非常に覚えにくい部分です。その違いを踏まえて分かりやすくまとめていきます。

促進型Gタンパク質(Gs)

このGタンパク質は、アデニル酸シクラーゼという酵素を活性化させ、セカンドメッセンジャーであるcAMPの細胞内濃度を上昇させます。

このGタンパク質を持っている受容体で有名なのが「βアドレナリン受容体」です。

「βアドレナリン受容体」には、β1とβ2がありますね。

β1は心臓への交感神経作用がメインで、心拍数・心収縮力とあげます。β2は、平滑筋への交感神経作用があり、平滑筋を弛緩させます。

いずれも「Gs」ではありますが、最終的な心臓とその他の平滑筋のアウトプットは異なることに注意が必要です。

抑制型Gタンパク質(Gi)

このGタンパク質は、アデニル酸シクラーゼという酵素を不活性化させ、セカンドメッセンジャーであるcAMPの細胞内濃度を低下させます。

このGタンパク質を持っている受容体で有名なのが「α2アドレナリン受容体」「アセチルコリンM2受容体」です。

「アセチルコリンM2受容体」は、心臓への副交感神経作用がメインで、心拍数の低下が生じます。


「α2アドレナリン受容体」では、ノルアドレナリンが結合することでCaチャネルが開きにくくなり結果として細胞活動が抑制されます。要するに交感神経作用を減弱させます。

すると副交感神経作用が優位になり、血管拡張・鎮静・鎮痛作用が現れるわけですね。

「キシラジン」「メデトミジン」はα2アドレナリン受容体の刺激薬で、鎮静薬として麻酔管理に用いられます。ただし副作用として血管拡張による血圧の低下が生じることは重要ですよね。

どっちでもないGタンパク質(Gq)

このGタンパク質は、上記2つとは異なりホスホリパーゼCという酵素を活性化させ、セカンドメッセンジャーである「IP3(イノシトール三リン酸)」「DAG(ジアシルグリセロール)」の細胞内濃度を上昇させます。

このGタンパク質を持っている受容体で有名なのが「α1アドレナリン受容体」「アセチルコリンM1、3受容体」です。

「α1アドレナリン受容体」には、交感神経作用として平滑筋の収縮作用があります。代表的には、「血管平滑筋」「膀胱平滑筋」「皮膚の汗腺・立毛筋」「瞳孔散大筋」ですね。


「アセチルコリンM1、3受容体」は、副交感神経作用として、心臓以外の平滑筋の弛緩作用があります。

Gタンパク質エフェクターセカンド
メッセンジャー
代表的な受容体
Gsアデニル酸シクラーゼ
活性化
cAMP
(増加)
βアドレナリン受容体
Giアデニル酸シクラーゼ
不活性化
cAMP
(減少)
α2アドレナリン受容体
アセチルコリンM2受容体
GqホスホリパーゼCIP3
DAG
α1アドレナリン受容体
アセチルコリンM1,3受容体

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