全身麻酔
全身麻酔に必要な4つの要素
全身麻酔には、上記の4つが必要ですが、
すべてを満たしている完璧な薬剤はないので 動物の状態、OPEの侵襲具合を考慮して、複数の薬物を使用するケースがほとんどです。
有害反射の消失とは、いわゆる「迷走神経反射」です。
麻酔の深度
全身の諸徴候によって麻酔の深度を4段階に分けられます。

実際にOPEが行える麻酔深度は「第3期(麻酔期)」からだよ!
麻酔の深度
麻酔をかけた動物がどの麻酔ステージにいるのかを判断するためには、「筋緊張」と「瞳孔サイズ」「眼瞼反射」など複数の指標をあわせて総合的に考える必要があります。
前投薬として「アトロピン」をいれている状況では、瞳孔が散瞳するので「瞳孔サイズ」で麻酔深度を計ることはできない点に注意しましょう!
吸入麻酔薬の指標
吸入麻酔薬の指標
「最少 肺胞内濃度〈MAC〉」は半数の動物で皮膚切開を加えても体動が認められない濃度を表し、MACが小さいほど強い麻酔薬になります。
実際に行うOPE中では95%の動物で体動を認めない濃度が必要なので、1MAC ではなく、およそ 1.5 MACで投与することになります。

OPE中に体動を起こされたら困るもんね!
| MAC | OPE中 MAC | |||
|---|---|---|---|---|
| 犬 | 猫 | 犬 | 猫 | |
| イソフルラン | 1.3% | 1.6% | 2% | 2.4% |
| セボフルラン | 2.3% | 2.6% | 3.5% | 3.9% |
加えて「血液 / ガス 分配係数」は、液相(血液)と気相(肺胞内)に含まれる容量の比を表し、小さい薬物ほど 導入と覚醒が早くなります。
吸入麻酔薬が神経細胞に取り込まれて作用するためには、血液が吸入麻酔薬で飽和する必要があります。「血液 / ガス 分配係数」が小さい吸入麻酔薬は、素早く飽和するので導入が早くなります。

血液に溶けにくい=飽和しやすいってことだね!
ほとんどが 液相 に移行せず 気相 に残っていることを考えると、それらを除くことで早期の覚醒が期待できます。
吸入 麻酔薬
特殊な機械によって気化されたものを吸引することによって麻酔作用を引き起こす薬を「吸入 麻酔薬」といい、一般的には麻酔”維持”のために利用されています。
吸入 麻酔薬
「ハロタン」は血液/ガス分配係数が高く、導入と覚醒に時間がかかり、また肝障害や悪性高熱のリスクのため一般的に使用されていません。
また「亜酸化窒素(笑気)」はMACが著しく”単独吸入”では外科的な麻酔深度まで到達できません。
その一方で血液/ガス分配係数が低いため、導入がスムーズで他の吸入麻酔薬と併用されることもあるようです。
イソフルラン・セボフルラン
なかでも麻酔作用が高く、
安全性も高いのが「イソフルラン」と「セボフルラン」になります。
「イソフルラン」は肝臓や腎臓での代謝をほとんど受けず、導入・覚醒が早い比較的安全な吸入麻酔薬です。微調整が効く点も大きなメリットですね!
一方で容量依存性に血圧が低下すること、軽度の気道刺激があることに注意して利用する必要があります。

例えば「ショック」状態の子に対して、
通常量でのイソフルラン使用は”さらなる”血圧低下を招いて危険だよね、、、
そんなときは吸入麻酔薬の量を減らせる工夫をしよう!
「セボフルラン」は「イソフルラン」と比較して気道刺激が少なく、導入・覚醒も早い優秀な吸入麻酔薬です。

MACがイソフルのほぼ倍だもんね、、、
注射 麻酔薬
「注射麻酔薬」は体内に注入することで麻酔作用を引き起こす薬をいいます。
吸入麻酔薬のように気化器が不要で、特に静脈注射の場合は素早く適当な麻酔深度が得られるメリットがあります。

基本的に麻酔が深かった場合に調整することができないよ!動物の状態を観察しながら慎重に投与しよう!
注射 麻酔薬
ケタミン
「ケタミン」は大脳皮質を抑制する一方で、大脳辺縁系を賦活することから「解離性麻酔薬」として知られた”麻薬”です。
その作用機序は「NMDA受容体」の拮抗によると考えられており、
痛み刺激に対して 侵害受容器から「グルタミン酸」が放出され、「NMDA受容体」を介して伝達していく点から単なる「鎮痛作用」だけでなく、痛覚過敏やアロディニアへの効果も期待できます。

GABA受容体には作用しないから他の注射麻酔薬による催眠とは異なるよ!
通常の使用量では呼吸抑制は少なく、また神経終末でのノルアドレナリンの再取り込みを抑制することで交感神経を促進し、ケタミン独自の陰性変力作用をカバー、あるいは上回ること可能性が示唆されています。
またケタミンはオピオイドの感受性を上げてくれるので、オピオイドと併用して開胸術や整形手術などの激しい疼痛を伴う手術の術中管理にも利用されます。

独り言なんだけど、
単剤使用での目覚めは悪いんだけど、前投薬でメデトミジンを使うと静かに起きるんだよなぁ
まれにカタレプシーや四肢硬直がみられることがある点に注意してください。いわゆるケタ痙攣ってやつです。
加えて脳圧をあげるので、てんかん発作の経歴があるような場合には禁忌になります。
プロポフォール・アルファキサロン
「プロポフォール」や「アルファキサロン」は、いずれも GABAA 受容体に働き、クロライド Cl−チャネルを直接開口させ過分極を起こすことによって活動電位を阻害します。

GABAの代わりになるんだね!
どちらも投与速度が速いと無呼吸や低酸素化が起こりやすいため、静注はゆっくり行い( to effect )、必要に応じて酸素化や換気補助が推奨されます。少なくとも気管挿管は必須と考えたほうが安全です。
また、両薬とも鎮痛作用は乏しく、外科手術などでは必ず鎮痛薬を併用する必要がありますよね。

アルファキサロンは、
プロポと比較するとなんだか目覚めが悪いような、、、(独り言、、、)
「プロポフォール」には添加物として卵黄レシチンが含まれているため、卵にアレルギーをもつ場合は禁忌になります。卵アレルギーがあるかどうかは事前にほとんど知れないですからね、、、
「アルファキサロン」は動物用医薬品として販売され、筋肉注射できるを覚えておきましょう!覚醒後のパディングや興奮がみられることがある点も頭の片隅に、、、

麻酔薬単剤で管理するのは止めようね、、、
鎮静薬
「鎮静薬」には「筋弛緩作用」がなく、呼吸が止まらない点で麻酔薬と異なります。

とはいえ、
血圧や心拍数を変化させ、循環器疾患・呼吸器疾患には要注意になることもあるので絶対”安全”ではないよ!
鎮静薬 まとめ
「フェノチアジン系」の鎮静薬は、ドパミンD2受容体を阻害することによって中枢神経を抑制し、鎮静作用を引き起こします。末梢ではα1受容体を阻害することによる低血圧のリスクもあります。
鎮静というより精神安定の意味合いで用いられます。
「ブチロフェノン系」の鎮静薬は、「フェノチアジン系」と同様にドパミンD2受容体を阻害し、その作用も類似しているようです。少なくともメジャーな鎮静薬ではないと考えています。

「アセプロマジン」、日本では販売されていないからなぁ、、、
「ベンゾジアゼピン系」は中枢神経系のGABAA受容体に対してアロステリックに作用し、GABAの作用を増強することによって鎮静作用を引き起こします。
呼吸循環器系への影響は最小限で、
特に高齢や全身状態が悪い子に対しては優れた鎮静薬だと考えています。
比較的若齢の子には単独で鎮静をかけるのは困難で、むしろ奇異性興奮がみられるケースがあるので注意が必要です。
「ベンゾジアゼピン系」には拮抗薬である「フルマゼニル」がありますよ!

アロステリックに作用するってのは、ここからチェックしてみよう!
プロポフォールとミダゾラムは、どちらもGABA受容体に作用するけど効果は少し異なるよね!作用機序にフォーカスしてみるとよく分かるよ!
「α2受容体”刺激”薬」の作用は、末梢作用と中枢作用があります。
末梢作用は血管のα2受容体刺激により、血管が収縮し「血圧上昇」、また圧受容反射により「心拍数減少」がみられます。
徐々に末梢作用が消失し中枢作用に移行してくると、
交感神経系の情報伝達物質であるノルアドレナリンの放出を抑制され、副交感神経作用が相対的に強まることで「血圧低下」「心拍数減少」に陥ります。
メデトミジンは、キシラジンに比べてα2受容体への選択性が高い上記の反応がより顕著にみられます。

中枢作用に移行した場合の「アトロピン」投与(緩徐に)はOK!
だけど末梢作用が強い時にアトロピンを使ってしまうと心拍数が上がり、血圧が急上昇してしまうから注意が必要だよ!
強力な鎮静効果、経口・口腔粘膜投与可能なのは優秀ですよね。
例えばですが、水の中に混ぜてあげれば、凶暴で扱えないような子にも鎮静をかけられる場合があります。
「アチパメゾール」と呼ばれる拮抗薬が存在することも忘れずに!
鎮痛薬
オピオイド
「鎮痛薬」には、麻薬性と非麻薬性があります。
オピオイド
オピオイド受容体には「μ(ミュー)」「κ(カッパ)」「δ(デルタ)」の3種類存在しており「μ受容体」が最も鎮痛に寄与し、特に「麻薬性オピオイド」は親和性が高く、強い鎮痛作用をもたらします。
一方で「”非”麻薬性オピオイド」の場合、結合する受容体の違いや親和性の点で鎮痛作用は比較的弱く、投与量を増やしてもある濃度で効果が頭打ちになる「天井効果」もその特徴の1つです。
| 分類 | 薬剤 | 受容体 | |
|---|---|---|---|
| μ | κ | ||
| 麻薬 | モルヒネ | ● | ● |
| フェンタニル | ● | ー | |
| “非” 麻薬 | ブトルファノール | 拮抗 | ● |
| ブプレノルフィン | ▲ | ー | |
| 拮抗薬 | ナロキソン | 拮抗 | 拮抗 |
「ブトルファノール」は鎮痛薬として学習しますが、「κ受容体」に結合するため鎮痛作用は”弱い”です。この点においては残念ですが、それをカバーするだけの「鎮静作用」「鎮咳作用(咳止め)」「制吐作用(吐き気止め)」を持っています。
また、「μ受容体」を競合拮抗することから、他のオピオイドとの併用は不適になる点に注意しましょう!

もしフェンタニルを使う可能性がある場合には、ブトルファノールでの前投与は不適だよ!
「ブプレノルフィン」は「μ受容体」に対する”部分”作動薬で、麻薬性オピオイドと比較すると活性が弱いといえます(鎮痛作用が弱い)。一方で「μ受容体」への結合力はメチャクチャ強く断固として離れないため、麻薬性オピオイドとの併用が困難です。

麻薬性と”非”麻薬性を併用するのは、不適当なんだね、、、
ステロイド or NSAIDs
以下の記事にまとめています!
抗痙攣薬(抗てんかん薬)
「てんかん」という疾患に対する薬物治療の目的は「てんかん発作」を起こさないこと!です。
持続的な発作は脳を損傷しますし、繰り返すほどに重篤化・難治化へ向かうため薬剤治療によって「てんかん発作」を抑え込む必要があります。

特発性の発作も当然考えられるので、半年に2回以上の発作を「てんかん発作」とし、それを引き起こす疾患を「てんかん」と呼ぶよ!
抗痙攣薬(抗てんかん薬)
使用する薬剤は犬と猫で異なる点に注意が必要です。

単剤で管理するのが基本だよ!
猫の場合1st →「フェノバール」
犬の場合1st →「フェノバール」「ゾニサミド」
猫の場合2nd →「レベチラセタム」
犬の場合2nd →「臭化カリウム」「レベチラセタム」

「バルプロ酸」や「フェニトイン」は人間では一般的だけど、小動物領域では絶対に使用しないでよ!
「ベンゾジアゼピン系」に錠剤という選択肢はないので、今起こっている てんかん発作を一旦止めるために使用します。
ミダゾラムは鼻腔内噴霧やCRIによる管理、ジアゼパムであればCRIでの管理に加えて直腸内投与が可能です。
問題行動 治療薬
問題行動 治療薬
「モノアミン再取り込み阻害薬」「選択的セロトニン再取り込み阻害薬( SSRI )」どちらも、動物用の医薬品があります。
「モノアミン再取り込み阻害薬」の代表な薬物である「クロミプラミン」や「イミプラミン」はいわゆる「三環系抗うつ薬」と呼ばれていますよね。
中枢神経 興奮薬
中枢神経 興奮薬
「キサンチン誘導体」はホスホジエステラーゼ阻害によるcAMP濃度上昇によって、末梢では平滑筋が弛緩します。特に「テオフィリン」は”気管支”拡張薬として利用されています。
「痙攣薬」は臨床には用いられませんが、、、
「ピクロトキシン」は GABA_A受容体のCl−チャネルを遮断、
「ストリキニーネ」は グリシン受容体を競合的に遮断することで神経活動を興奮させます。

GABA受容体もグリシン受容体も
抑制性の神経伝達物質に関与する受容体だったね!


