化学物質の環境中動態
化学物質が環境中へと放出されると、「大気相」「水相」「土壌相」「生物相」のそれぞれ相間を物理化学的な性状によって平衡状態に達するまで移動します。
この過程で、様々な変換過程を経て分解・消失されます。中には「ポリ塩化ビフェニル」や「ダイオキシン」などの難分解性の化学物質も存在しています。
バイオアッセイ
化学物質が生体にどれほどの毒性があるかを、「経済 協力 開発機構(OECD)」や「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」に基づき、対象生物に対して特定の「生態毒性試験」を行っています。
以下にその対象動物をまとめます。
生態毒性試験の対象生物
水相に含まれる化学物質に関しては水生生物が、大気相では鳥類が、土壌相ではミミズが対象動物になっています。特に水生生物においては「TLm」が指標になっており、いわゆる魚毒性試験における50% 致死濃度(LC50)のことをいいます。
「生物濃縮試験」とは、生物体内における化学物質の蓄積性を評価するための試験です。指標となるのは「生物濃縮係数」です。
「生物濃縮係数」は、生体内で化学物質の蓄積が定常状態にある場合の生体内濃度と環境中の濃度の比から算出される数値ですが「オクタノール/水分配係数〈Pow〉」から推定することも可能です。
「オクタノール/水分配係数〈 Pow 〉」は、1-オクタノール(octanol)と水(water)の2つの溶媒相中に化学物質を加えて平衡状態となった時の、その2相における化学物質の濃度比のことをいいます。
環境汚染物質
環境汚染物質 まとめ
硫黄酸化物 や 窒素化合物は、大気中でヒドロキシラジカルによる光化学反応を受け、酸性粒子あるいはガスなどに変化します。このような過程により生じた酸性物質が雨や雪によりこまれて落下することで「酸性雨」になります。

酸性雨という概念は 雨だけでなく雪や霧・ガスや粒子などを含めた酸性降下物を含んでいるよ!
「温室効果ガス」が大気中に増えることによって、太陽から降り注いだエネルギーが地表に籠もり「地球温暖化」を引き起こします。
温室効果ガス まとめ

排出量が最も多いのは「二酸化炭素〈C0₂〉」だよ!
「オゾン層」は宇宙からの有害な紫外線を吸収し、地球上での生物繁栄に大きく貢献しています。
冷蔵庫やエアコンには、ものを冷やすための冷媒として「フルオロカーボン(フロン)」が使用されており、このフロンが漏れると空気中を上昇し、やがて「オゾン層」に到達・破壊、さらに「温室効果」も引き起こします。
現在では、オゾン層を破壊しない “代替”フロン が使用されていますが、相変わらず温室効果の能力が高く「温室効果ガス」として「モントリオール議定書」の対象に追加されました。
オゾン層 破壊フロン

上記の通り、
フロンは「温室効果ガス」としての側面を持っているから注意だよ!
環境汚染を引き起こす金属類として有名なのは「有機スズ〈Sn〉」「鉛〈Pb〉」「水銀〈Hg〉」「カドミウム〈Cd〉」です。
「有機スズ〈Sn〉」は、海産巻貝類に対しての「インポセックス」、「鉛」は水鳥の鉛中毒が有名な環境被害です。「水銀〈Hg〉」や「カドミウム〈Cd〉」は、環境だけでなく人体への被害も出たため事件化しました。
加えて「鉛」は、赤血球に対して働き溶血させるだけでなく、「δ―アミノレブリン酸脱水酵素(δ- ALAD)を阻害して、ヘム合成を阻害することも重要です。

現在では、鉛弾の使用は禁止されているよ!
「有機ハロゲン化合物」は一般的に難分解性かつ脂溶性であるため、環境に長期間残留して食物連鎖や哺乳を通して生物に蓄積されます。いわゆる「残留性 有機汚染物質〈POPs〉」ですね。
有機ハロゲン化合物 まとめ
リスクアナリシス(リスク分析)
有害化学物質について,ヒトの健康に悪影響を及ぼす可能性がどの程度あるか(リスク)を事前に把握し,その問題の発生を未然に防ぐため,あらかじめ必要な対策を講じること。次の1~3の 3 つの要素からなる。
1:リスクアセスメント
化学物質の持つ有害性(リスク)を科学的に評価する手法。各化学物質について用途に合わせて各省庁で行われる(食品に関連する化学物質ついては食品安全基本法に基づいて内閣府の食品安全委員会で行う)。
- ①有害性確認
この化学物質にはどんな毒性があるの?強いの?作用機序は?を十分に検討する段階。
- ②用量反応性評価
有害性が確認されたら、毒性試験により無毒性量(NOAEL)または最小作用量(LOAEL,NOAEL が得られなかった場合)を求め、安全量(ヒトが摂取したときに有害性が生じない量)を算出する段階。
- ③暴露評価
ヒトが曝露される化学物質の量を実評価する段階。
- ④リスク判定
安全量と曝露量を比較して、対象の化学物質の”安全性”を評価する段階。食品、飲料水、大気の基準値が決められている。安全マージン( MOS )も用いられる。MOS が 100 以下の場合は対策が必要とされる。
2:リスクマネジメント
リスクアセスメントの結果に基づいて、リスクを回避する基準値を設定、基準値を超える有害性が確認された場合には、低減および回避する対策を実施し、さらにその効果を検証する。
化学物質の用途に合わせて、
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」
「食品衛生法」
「食品安全基本法」
「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」
「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化管法)」
「農薬取締法」
「毒物及び劇物取締法(毒劇法)」
などに基づき各省庁で行われます。
ポジティブリスト制度
ポジティブリスト制度とは、
「原則規制(禁止)された状態で、使用・残留を認めるものを登録し、リスト化する制度」です。
食品衛生法によって、食品ごとに食品添加物・農薬・飼料添加物・動物用医薬品について、
- 登録されたすべての物質(ポジティブリスト):それぞれ使用基準または残留基準が設定
- 登録されていない(残留基準のない)物質は: 一律基準( 0.01 ppm )が設定。
- 一般の化学物質は,規制が必要とされる物質を指定し(ネガティブリスト),さらに摂取における寄与が大きい食品についてのみ基準が設定される。
3:リスクコミュニケーション
「市民」・「産業」・「行政」等すべてのものが、化学物質等の安全性に関する情報を共有し、意見交換などを通じて意思疎通と相互理解を図ることをいいます。
リスクコミュニケーションを推進する制度として以下が挙げられます。


