犬の進行性網膜萎縮に関する記述として適切でないのはどれか。

過去問

71回 B問題 問52

難易度:並

犬の進行性網膜萎縮に関する記述として適切でないのはどれか。
  1. 遺伝性疾患である。
  2. 突然失明することが多い。
  3. 診断には網膜電図検査が有用である。
  4. 病後期に白内障を発症する。
  5. 有効な治療法はない。

選択肢を吟味しよう!

重要度:☆☆☆
遺伝性疾患である。

そうそう!

重要度:☆☆☆
突然失明することが多い。

網膜の辺縁から徐々に進行していきます。

重要度:☆☆☆
診断には網膜電図検査が有用である。

網膜が萎縮しているため、網膜電位図検査をしても反応が得られないのは想像ができますね。

重要度:☆☆☆
病後期に白内障を発症する。

本来「白内障」では、濁った水晶体で光が散乱するため「眩しがる」というのが症状として重要ですが、、、背景に網膜変性を伴う場合は、この症状を示しません!!

つまり網膜萎縮による二次的な白内障ということになります。複雑ですな。

どうして網膜萎縮により、白内障が生じるのか?

結論:網膜萎縮により網膜の光受容体が過酸化反応を示すことにより、アルデヒドが硝子体に放出されます。このアルデヒドが、水晶体の後嚢に影響を与え水晶体を障害するんですね。

この機序を解明した方は、スゲェわ!!!

こういった場合、過酸化を抑制する必要があるため抗酸化物質であるビタミンE製剤を点眼してあげることが白内障の発症リスクを低減できるのでは?と考えています。一般の動物病院では診断するのも困難だと思いますが、、、

重要度:☆☆☆
有効な治療法はない。

不可逆的なので、治療法はありません。

解説

網膜疾患で有名なのは「進行性網膜萎縮(遺伝性網膜変性症)」「網膜剥離」「突発性後天性網膜変性症候群(SARDs)」の3つです。

進行性網膜萎縮とは?

先天的・進行性に、視細胞・網膜色素上皮が障害を受け視覚消失に至る疾患です。後発犬種は「ダックスフンド」です。

はじめは「桿体細胞」が障害をうけることによる「夜盲症」、網膜自体が薄くなることによる「タペタムの反射亢進」が特徴的です。

網膜の変性・萎縮に伴い、「白内障」が認められる場合があることも重要ですね。

残念ながら治療はありません。

網膜剥離とは?

網膜剥離は、網膜の脈絡膜から分離した状態をいいます。原発的に網膜が剥離するのではなく、「硝子体変性」「緑内障」「ぶどう膜炎」に伴って二次的に生じます。

超音波検査にて「かもめ」は有名な所見です。

網膜剥離が生じた原因の疾患を治療することで、視覚の回復が見込めます。そのため、早期診断・早期治療が重要です。

突発性後天性網膜変性症候群(SARDs)

いわゆるザードと呼ばれる疾患です。特徴的なのは微小な網膜の変化による症状のため、眼底検査をしても異常所見が見つかりにくいという点です。

治療方法もありません。