犬の甲状腺機能低下症に関する記述として適切なのはどれか。

過去問

71回 B問題 問48

難易度:易

犬の甲状腺機能低下症に関する記述として適切なのはどれか。
  1. 活動性の低下は主な臨床徴候の 1 つである。
  2. 皮膚が菲薄化していることが多い。
  3. 低コレステロール血症を伴うことが多い。
  4. 原発性の場合は血中 TSH 濃度が低下する。
  5. 通常レボチロキシンナトリウムの生涯にわたる投薬が必要である。

1. a, b 2. a, e 3. b, c 4. c, d 5. d, e


選択肢を吟味しよう!

重要度:☆☆☆
活動性の低下は主な臨床徴候の 1 つである。

重要度:☆
皮膚が菲薄化していることが多い。

副腎皮質機能亢進症の説明です。

重要度:☆☆☆
コレステロール血症を伴うことが多い。

高コレステロール血症になりやすい病気は以下にまとめます。

  • 甲状腺機能低下症
  • ネフローゼ症候群

重要度:☆☆☆
原発性の場合は血中 T4 濃度が低下する。

TSHは、甲状腺ホルモン放出ホルモンです。

原発性甲状腺機能低下症は甲状腺そのものが機能不全になっているため、低下するのは甲状腺モルモン(T4)です。当然、体は甲状腺ホルモンを分泌しようと必死ですから、甲状腺ホルモン放出ホルモン(TSH)を過剰に分泌します。

せっかく血液検査をするなら、

重要度:☆☆☆
通常レボチロキシンナトリウムの生涯にわたる投薬が必要である。

体内で分泌されないなら、外から入れて上げる必要がありますね。

解説

犬の甲状腺機能低下症

甲状腺炎や甲状腺萎縮に伴って起こる、甲状腺原発の甲状腺機能低下症が一般的です。中枢性は腫瘍 or 医原性により生じますが、レアケースです。

症状は、「活動性低下」「体重増加」「運動不耐性」です。人間で言う「デブ症」みたいな感じですよね。あとは、「皮膚症状」もありますが特異性はなくいまいちピンときません。

血液検査上で重要なのが「高コレステロール血症」です。これを見つけたら「TSH」と「T4」を追加で調べたほうが良いと考えています。

合併症として「巨大食道症」が起こる場合は稀にあるようです。巨大食道症に関してはこちらから。

診断は?

診断は「TSHの上昇」と「T4の低下」です。
甲状腺ホルモンが低下すると、甲状腺ホルモン放出ホルモンであるTSHを過剰に分泌して甲状腺ホルモンの分泌を促します。この疾患は、機能低下なのでTSHはには残念ながら反応しませんが、診断には使えることになります。

最近、TGAA(抗サイログロブリン抗体)を調べる方法もあります。

あくまで両者セットで行う必要があります。なぜかは、下に書いています。

治療は?

治療は、足りないものを足してあげるだけです。
用いられるのは「レボチロキシンナトリウム」が多いですね。

偽の甲状腺機能低下症に注意しよう!

甲状腺機能低下症との鑑別で最も重要な疾患です。

この病気は、背景になんらかの疾患を抱えていた場合や薬剤使用により甲状腺ホルモンが低下してしまう病気で甲状腺自体は正常です。そのことから、甲状腺機能正常症候群(Euthyroid sick syndrome)と呼ばれたりもします。

甲状腺ホルモンを低下させる薬剤(獣医国家試験外)

  • ステロイド
  • フェノバルビタール

単に血液検査で診断!安心!ではなく、身体症状・他の病気の検索に進む等総合的に診断していく必要があります。甲状腺は悪くないのにその薬を飲ませられるなんていう悲劇は避けたいね。このブログを読んでくれている優秀な読者は、そうならないために勉強しよう!