犬のリンパ球プラズマ細胞性腸炎の治療に用いる薬剤として適切なのはどれか。

過去問

71回 B問題 問45

難易度:並

犬のリンパ球プラズマ細胞性腸炎の治療に用いる薬剤として適切なのはどれか。
  1. ビンクリスチン
  2. プレドニゾロン
  3. クロラムブシル
  4. トリロスタン
  5. ゾニサミド

選択肢を吟味しよう!

重要度:☆
ビンクリスチン

抗がん剤です。抗がん剤に関しては、こちらでまとめています。

重要度:☆☆☆
プレドニゾロン

免疫抑制薬です。

重要度:☆☆
クロラムブシル

アルキル化薬で抗がん剤に分類されます。

重要度:☆
トリロスタン

副腎皮質機能亢進症の治療に用いられる薬です。他には、「ミトタン(o,p’-DDD)」がありますが、副腎をぶっ壊してます。

重要度:☆
ゾニサミド

抗てんかん薬です。犬のファーストチョイスになっている優秀な薬です!薬品の名前は「コンセーブ」。臨床に出ると頻繁に目にするでしょう。

てんかん薬(抗けいれん薬)に関しては、こちらから。

解説

慢性腸症とは?

慢性腸症は診断が難しい疾患です。診断基準(覚えなくて良い)は以下にまとめます。

  • 3週間以上持続する消化器症状
  • 対症療法への反応性が低い
  • 鑑別疾患の除外
    • 甲状腺機能低下
    • 副腎皮質機能低
    • 膵外分泌不全
  • 病理検査でのリンパ球性の炎症像


「リンパ球プラズマ細胞性腸炎」や「リンパ球形質細胞性腸炎」は、あくまで病理診断獣医がつける病名ですから、臨床医はそれを踏まえた上で除外診断を行い「慢性腸症」を診断していきます。

また炎症性腸疾患(IBD)は、クローン病や潰瘍性大腸炎を指す言葉としても使われるようなので獣医領域では「慢性腸症」という方が適していると考えています。

好発犬種はいるのか?

好発犬種は圧倒的に「柴犬」です。しかも他の犬種での慢性腸症に比べて治療に抵抗性で予後が悪いというのが特徴です。実は「上皮向性小細胞性リンパ腫」である可能性もあり、研究が進んでいます。

多分ですが、慢性腸症からリンパ腫へと移行しているのかもしれません。

ややこしい疾患名を理解しよう!

「蛋白漏出性腸症」「リンパ管拡張症」は「慢性腸症」に関わりのある疾患です。

超音波検査や内視鏡検査にて「リンパ管拡張症」と診断できた場合、それは蛋白を漏出している所見なので「蛋白漏出性腸症」の可能性が高いことになります。

一方で、血液検査で低アルブミン血症があるからと言って、「蛋白漏出性腸症」とも言えないし、蛋白を漏出している状況でリンパ管拡張症ともいえません。

要するに、蛋白漏出性腸症はあくまでも二次性の疾患であるということです。

治療は?

慢性腸症の分類は、試験的治療により行っていきます。治療に反応したら、診断名がつく!ということです。

慢性腸症の診断的治療

慢性腸症の50%ぐらいが食事反応性腸症だと言われているため、試験的治療で最も大事なのは食事療法です。食事療法は2週間程度で症状の改善がみられます。

犬でオススメのフード(国家試験範囲外)

  • アミノペプチドフォーミュラ
  • z/d(加水分解)

猫でオススメのフード

  • 低分子プロテイン
  • i/d 腸内バイオーム

抗菌薬反応性腸症の診断で用いられる抗菌薬が「タイロシン」「メトロニダゾール」です。最近は薬剤耐性菌の出現を考慮して最近疑問視されているため、問題にはなりにくいかなと考えています。

免疫抑制薬反応性腸症の診断に用いられる薬剤は「プレドニゾロン」と「クロラムブシル」です。他には「シクロスポリン」「アザチオプリン」などの免疫抑制薬も考えられますが、両者に比べて効きがイマイチのようです。

最後のなんにも効かないやつ。もしかしたら「慢性腸症」の類いではなく腫瘍、特に「小細胞性消化管リンパ腫」の可能性も出てきます。こうなったら、病理で診断するほかなくなります。が簡単に鑑別できないですよね〜。