心原性肺水腫の原因となる疾患として誤っているのはどれか。

過去問

73回 A問題 問44

難易度:並

心原性肺水腫の原因となる疾患として誤っているのはどれか。
  1. 肺動脈弁狭窄症
  2. 僧帽弁狭窄症
  3. 大動脈弁逆流症
  4. 僧帽弁閉鎖不全症
  5. 拡張型心筋症

選択肢を吟味しよう!

重要度:☆
肺動脈弁狭窄症

右心不全に陥ります。

肺動脈が狭窄しているため、通常よりも強い心筋の収縮で血を送らねば血圧を維持できません。これを圧負荷といいます。心筋に対する圧負荷によって、心臓が求心性に肥大していきます。

「”強心薬”が薬としてあるくらいなんだから、良い事じゃないの?」と思う方もいるかも知れませんが、心筋の肥大に伴って心臓内に貯めておける血の量が減っていきます。すると、血圧を保つために心拍数を多くして対処することになります。。。

感のいい方は分かったと思いますが、そうなれば更に心筋が肥大して負のループに陥ります。

重要度:☆☆☆
僧帽弁狭窄症

左心不全です。
あまり聞かないですね。

重要度:☆☆☆
大動脈弁逆流症

左心不全です。
この疾患もあまり聞かないです。

重要度:☆☆☆
僧帽弁閉鎖不全症

左心不全です。

僧帽弁の閉じが悪いため、左心室の血液が一部左房に逆流します。通常よりも左房に多く血が存在するため、左房が拡張していきます。これを「容量負荷」と言います。

そして容量負荷により左房の圧が高くなり、拡張期に左室に流入することにより左室の容量負荷も生じてくると容量負荷による遠心性の肥大が起きてきます。また、左房圧の上昇により肺血管圧も高くなることで肺水腫」の原因にもなります。

重要度:☆☆☆
拡張型心筋症

うーん。胸水も腹水も貯まる場合があります。

猫の心筋症 まとめ


肥大型心筋症・・・心臓の拡張不全

拘束型心筋症・・・心筋の線維化による心臓の拡張不全

拡張型心筋症・・・心臓の収縮不全

解説

心原性肺水腫とは?

心不全、特に左心不全により血液が肺血管にうっ滞、
肺血管圧が上昇することで肺胞側に血液の液体成分が流入し肺水腫を起こします。

犬で最も疑われる疾患は「僧帽弁閉鎖不全症(通称:MR)」、猫だと「肥大型心筋症(HCM)」です。

左心の影響による血液のうっ滞は「肺」に肺水腫で現れ、右心の影響によるうっ血は「頸静脈・後大静脈」などの静脈系(怒張)に現れてきます。

容量負荷 vs 圧負荷


容量負荷(前負荷)・・・
心臓の収縮の負荷 心臓へ流入する血液量が増えるほど大きくなります。ちなみに「フランクスターリングの法則」とは前負荷が増えれば心機能も高まることをいいます。容量が増えるわけですから、一般的に遠心性に肥大します。

圧負荷(後負荷)・・・
心臓が収縮したの負荷 大動脈圧、肺動脈圧が高いほど大きくなります。圧が増えると一般的に求心性(内側に)に肥大していきます。

陰圧性肺水腫とは?

肺水腫が生じる原因は、なにも心臓だけではありません。

何か気道に閉塞物があった場合に、胸腔内圧が過剰に陰圧になってしまうことにより肺水腫に陥ります。短頭種に関連する上部気道閉塞だけでなく、「腫瘍」「異物」「重度の気管虚脱」でも起こりうる疾患です。

これを「陰圧性肺水腫」と言います。
肺水腫が起こる原因は必ずしも心臓ではないのですよ!!!

陰圧性肺水腫になる過程

  • 気道の閉塞
  • 横隔膜の強い収縮による胸腔内陰圧
  • 血流用の増加
    • 人工呼吸のデメリットは、陽圧換気なので肺血流量が低下することです。自発呼吸ではハイへの血流が維持されます。
  • 静水圧の上昇
  • 肺水腫