パスツレラ症あるいはその病原体に関する記述として適切なのはどれか。

過去問

71回 B問題 問31

難易度:易

パスツレラ症あるいはその病原体に関する記述として適切なのはどれか。
  1. ヒトでは波状熱が特徴的症状である。
  2. 動物の間ではノミによる媒介が多い。
  3. 菌分離にはベアード・パーカー寒天培地が用いられる。
  4. ヒトでは保菌動物からの創傷感染が多い。
  5. 動物の口腔内に常在する。

1. a, b 2. a, e 3. b, c 4. c, d 5. d, e


選択肢を吟味しよう!

重要度:☆
ヒトでは波状熱が特徴的症状である。

波状熱は「ブルセラ病」の症状だと思われます。

重要度:☆
動物の間ではノミによる媒介が多い。

ペストの説明かと思います。

重要度:☆
菌分離にはベアード・パーカー寒天培地が用いられる。

黄色ブドウ球菌の試験法の第一選択培地です。

肝心の黄色ブドウ球菌S. aureus)は「黒」の集落と作ります。他のStaphylococcus菌(コアグラーゼ陰性)との鑑別は卵黄反応が生じているかどうかで判断します。卵黄反応があったら、黄色ブドウ球菌です。

パスツレラの分離培地は「血液寒天培地・チョコレート寒天培地」のようですが、他の菌の分離にも使いますからね、、、重要度は高くないと考えています。

重要度:☆☆
ヒトでは保菌動物からの創傷感染が多い。

例えば、猫から人へ創傷感染するのはパスツレラ菌だけでなく、

猫ひっかき病」として有名な「Bartonella henselae」や
カプロサイトファーガ感染症」を引き起こす「Capnocytophaga canimorsus」があります。

重要度:☆☆☆
動物の口腔内に常在する。

正解です。

解説

原因菌:Pasteurella multocida による感染症です。

パスツレラ症は、人獣共通感染症で、様々な動物種に感染を起こします。さらに、家畜伝染病予防法に指定されている疾患が多いので、かなり重要な細菌ですよ!

猫は、ほぼ100%口腔・消化管内に存在、犬も半数以上は口腔内に常在しています。

牛のパスツレラ感染症

牛のパスツレラ感染症として重要なのは、「出血性敗血症」です。
知らない人はいない法定伝染病ですよ。

Pasteurella multocidaなら何でも良いわけではなく、以下のように指定されています。
莢膜抗原」は重要ですよ!

莢膜抗原型がB又はEであって、菌体抗原型がHeddlestonの型別で2又は2・5であるものに限る。)

https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/eisei/e_koutei/kaisei_kadenhou/attach/pdf/pathogen-17.pdf

豚のパスツレラ感染症

Pasteurella multocida」 と
Bordetella bronchiseptica との混合感染で有名な

萎縮性鼻炎」を忘れてはいけませんね!届け出伝染病ですよ!

鶏のパスツレラ症

これも絶対に忘れてはいけない、
法定伝染病である「家禽コレラ」です。

パスツレラという細菌自体、
ルイ・パスツールという偉い研究者が名付けました。

パスツールがワクチンを発明したと誤解されることが多いですが、「ジェンナー」による天然痘を予防する種痘法に「ワクチンと名付けた」のがパスツールです。

また白鳥の首型のフラスコを用いて、微生物の「自然発生説」を否定し、感染症の原因が細菌であることも発見しています。細菌学の土台を作った、パスツールはまさに偉大な存在ですね。

ウサギのパスツレラ感染症

有名なのは「スナッフル」です。国家試験にも出ていましたね。