【獣医師国家試験】生殖器系2〈雌性生殖器系の構造と機能〉

まとめ

本記事は、獣医師国家試験の出題基準を一から解説しようとする一大プロジェクトの「生殖器系」編の第2弾です。

卵巣・卵巣囊

「卵巣」の構造は、さまざまな発達段階の「卵胞」や「黄体」がみられる「皮質」と血管が豊富な「髄質」に分けられています。

馬の「卵巣」では皮質と髄質が逆転しており、皮質は「排卵窩」とよばれる部分で表面に現れて、成熟した卵胞はすべて「排卵窩」から排卵されます。

Nekoyasiki
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卵巣の機能のほとんどは「皮質」が担っているんだね!

皮質内に形成された「原始卵胞」はホルモン( LH・FSH )の影響を受けて、「一次卵胞」「二次卵胞」「三次卵胞」、最終的に「成熟卵胞(グラーフ卵胞)」まで成長します。

その後「LHサージ」によって「排卵」が起こると「卵(子)」は「卵管」へ、残された卵胞遺残物は「黄体」へと変わります。

卵管

卵管 まとめ

  • 卵管漏斗
  • 卵管膨大部
  • 卵管峡部

卵管」は卵子を受け取る「卵管漏斗」から始まり、「卵管膨大部」→「卵管峡部」を介して子宮へと繋がります。

卵管漏斗」の自由縁は「卵管采」と呼ばれ、卵巣の表面に接着して卵母細胞の受取口となります。卵母細胞は「卵管膨大部」で留まり受精が起こります。

受精卵は細胞分裂しながら下降し、「卵管峡部」を通って「子宮」へと運ばれます。

Nekoyasiki
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卵管は単層円柱上皮で構成されており、もちろん「線毛」があるよ!このような構造も輸送に関与しているよね!

子宮

子宮の構造 まとめ

  • 子宮内膜
  • 子宮筋層
  • 子宮外膜

「子宮」は3層構造をしており、
「子宮内膜」「子宮筋層」「子宮外膜」で構成されています。

子宮内膜」は「胎盤」と付着する部分です。「子宮腺」をもちます。反芻類では内膜にボタン上の「子宮小丘」と呼ばれる隆起が特徴的で、いずれ胎盤を形成します。

Nekoyasiki
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「子宮筋層」は「オキシトシン」の影響で収縮するよね!

動物ごとの種差

子宮 まとめ

  • 双角子宮 ー 馬
  • 両分子宮 ー 多くの哺乳類
  • 単一子宮 ー ヒト・サル
  • 重複子宮 ー ウサギ

ウサギのもつ「重複子宮」は、左右の子宮角が癒合せずそれぞれが独立した子宮口をもっています。

外観的に「双角子宮」と思われても、子宮体が中隔「子宮帆」によって仕切られている場合があり、これを「両分子宮」といいます。

「両分子宮」の「子宮体」は長いように見えますが「子宮帆」によって仕切りられているため実際は短く、ほとんどが「子宮角」になるのが特徴です。代表例は牛です。

「腟」は「子宮」と「外生殖器」とつなぐ管状の筋肉組織で、陰茎を受け入れる場所および産道になります。膣から子宮には「子宮頸管」が存在しています。

「膣」の後方には「膣弁」が存在し、「膣前庭」と区別され、境界なく「陰門」につながります。

「膣前庭」には「外尿道口」が開口しています。

「子宮頸管」は、反芻動物で「輪状ひだ」が著しく発達していて閉鎖に大きく関わります。豚の場合は「頸沈」を形成して、雄豚のラセン状の陰茎とフィットする特徴的な構造をもっています。

Nekoyasiki
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「子宮頸管」が閉じているから、子宮内にいる胎児は落ちてこないんだね!

外生殖器

外生殖器 まとめ

  • 大陰唇・小陰唇
  • 陰核

「外生殖器」には
大陰唇・小陰唇」と「陰核」があります。

胎盤

絨毛の分布により分類

胎児は母側から栄養供給してもらう必要があり、
この絨毛(絨毛膜絨毛)によって母側の子宮内膜と接合して母から栄養を供給されている!ということになります。

この絨毛膜絨毛の分布による分類では、
胎児を覆っている絨毛膜”絨毛”が”どこに”存在するかによって分類しています。

散在性胎盤」は絨毛が絨毛膜のほぼ全面に散在しています。

ウマでは、絨毛が絨毛膜の全面に存在しているため「完全散在性胎盤」と呼ばれています。一方ブタでは胎嚢の両端が突出しており、この部分には絨毛が存在していないため「””完全散在性胎盤」と呼びウマと区別しています。

叢毛性胎盤」は絨毛がいくつか部分的に発達しています。この部分を「子宮小丘」といいます。ウシ、ヒツジ、ヤギなどの反芻類はこの胎盤に属します。

帯状胎盤」は食肉類にみられ、名前通り絨毛が帯状に分布しています。

「盤状胎盤」は絨毛膜絨毛が限られた部分でのみ円盤状に母側の子宮内膜と付着します。この胎盤は、霊長類、げっ歯類、ウサギにみられます。

胎盤の接着様式による分類

胎児側の胎盤は3層構造をしており「胎児絨毛上皮」「胎児結合織」「胎児血管内皮」に分けられます。同じように母体側の胎盤も「子宮内膜上皮」「母体結合織」「母体血管内皮」の3層構造です。

胎児側はほぼ絨毛が母側に付着しますが、母側は動物ごとに変わります。その「母 – 胎児」との接着様式によって分類しています。

母体(子宮内膜)胎児胎盤
内皮結合織上皮絨毛 – 結合織 – 内皮
上皮 – 絨毛
結合織 – 絨毛
内皮 – 絨毛
血 – 絨毛

まとめ

動物絨毛の分布胎盤の接着様式
ウマ完全 散在性 胎盤上皮 – 絨毛性 胎盤
ブタ完全 散在性 胎盤
反芻類(ウシ)叢毛性 胎盤結合織 – 絨毛性 胎盤
食肉類(イヌ・ネコ)帯状 胎盤内皮 – 絨毛性 胎盤
霊長類
げっ歯類
ウサギ
盤状 胎盤血 – 絨毛性 胎盤
見にくい場合は、スマホの向きを90℃回転させて下さい。

卵子ができるまで

基本的な流れは精子と同様に
卵祖細胞」→「一次卵母細胞」→「ニ次卵母細胞」→「卵細胞(卵子)」となります。

胎児として生まれてくるときには、
すでに「卵祖細胞」が体細胞分裂を終えて「一次卵母細胞」となり、さらに一回目の減数分裂の「第一分裂 前期」の中途半端な状態で存在します。

Nekoyasiki
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「第一卵母細胞」は新しく作られないから、僕らと同じように年を取っていくんだね!
出生時が最も数が多くて、成長に伴って徐々に減っていくんだよ、、、

動物がある程度成長して「春機発動」を迎えると、性ホルモン(LHサージ)の影響により、途中で止まっていた「減数分裂」が再開して「二次卵母細胞」の「第二分裂 中期」で再び止まります。

この状態で「排卵」が起こります。

2回目の減数分裂である「第二分裂」が再開されるのは、「卵管(膨大部)」での「精子」の侵入を受けてからになります。

加えて、
「一次卵母細胞」から「二次卵母細胞」形成の過程で1つ、
「二次卵母細胞」から「卵子細胞」への過程で1つ「極体」を放出するため、

選りすぐりのたった1つの優秀な「二次卵母細胞」しか形成されないのも特徴です。

Nekoyasiki
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オスでは、1つの卵祖細胞から4つの精子ができるよね! 

卵胞の発育

まとめ

  • 一次卵胞
  • 二次卵胞
    • 顆粒膜細胞層の形成
    • 透明帯の形成
  • 三次卵胞
    • 大きな卵胞腔が形成され「胞状卵胞」と呼ばれる。
    • 放線冠の形成
  • 成熟卵胞(グラーフ細胞)
    • 排卵直前

胎児期〜出生期になると、「卵巣」内に存在する「一次卵母細胞」は、単層の「卵胞 上皮細胞」に包まれて「一次卵胞」を形成します。特に、初期のしょきで扁平で単層の卵胞上皮細胞で包まれている場合を「原始卵胞」と呼びます。

Nekoyasiki
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卵巣では「一次卵母細胞」が「一次卵胞」の状態で存在しているよ!

「春機発動」が起こると性周期ごとに一定数の「一次卵胞」が発育し、「卵胞上皮細胞」が増殖します。この増殖して重層化した「卵胞上皮細胞」を「顆粒膜 細胞」と呼び、「ニ次卵胞」が作られます。

「二次卵胞」になると、卵母細胞と顆粒膜細胞の間にゼリー状の「透明帯」が作られ始めます。

Nekoyasiki
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この「透明帯」は卵割に伴った一つ一つの細胞をまとめるために必要なんだって!
この透明帯を破って出ることを「孵化(ハッチング)」というよ!

卵胞上皮細胞の増殖が絶えず行われ、徐々に「卵胞液」で満たされた「卵胞腔」が作られます。このような卵胞を「三次卵胞(胞状卵胞)」と呼びます。

この頃になると、「一次卵母細胞」は一部に顆粒膜細胞に包まれながら「卵胞腔」の方向へ離れていき「卵丘」を構成します。「卵丘」をつくる「卵丘細胞」は「透明帯」に突起と伸ばして卵母細胞とのコミュニケーションを取り合っています。このような「透明帯」にみられる構造を「放線冠」といいます。

最終的に排卵局前の卵胞は「成熟卵胞(グラーフ卵胞)」と呼び、下垂体からのLHサージにより減数分裂が再開され「二次卵母細胞」となり「透明帯」とともに排卵されます。

Nekoyasiki
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精子は透明帯を通過して卵母細胞まで侵入するよ!

取り残された「顆粒膜細胞」は、その後「黄体」を形成します。

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