本記事は、獣医師国家試験の出題基準を一から解説しようとする一大プロジェクトの「内分泌系」編の第2弾です。
ホルモンの種類
ホルモンは化学的な特徴によって、大きく以下の3種類に分類されます。
これらのホルモンは、合成方法・分泌方法・標的細胞への作用様式が異なります。
特に、ホルモンが脂溶性か水溶性かによって、細胞膜を通過できるかどうかが決まるため、作用の仕方にも違いがあります。
ホルモンの種類
アミノ酸誘導体ホルモン
「アミノ酸誘導体ホルモン」は、能動的に細胞内に取り込まれた「アミノ酸」が一連の酵素反応によって加工され、「開口分泌」によって細胞外へと放出されます。
「甲状腺ホルモン」は例外で、
「サイログロブリン(TG)」とよばれるタンパク質が分解されることによって生じます。
ステロイドホルモン
「ステロイドホルモン」は「コレステロール」から作られます。
ペプチドホルモン
「ペプチドホルモン」は一般的なタンパク質合成を同じ様に、転写・翻訳された後、アミノ酸が数珠状に連結して作られます。

「タンパク質」はアミノ酸の数珠がもっと長くて、立体的な構造をとるよ!
ステロイドホルモンはどれか。
- 卵胞刺激ホルモン
- 黄体化ホルモン
- エストロゲン
- 性腺刺激ホルモン放出ホルモン
- 甲状腺刺激ホルモン
3が正解です。
注意度:★
卵胞刺激ホルモン(FSH)
糖タンパクホルモンです。
注意度:★
黄体化ホルモン(LH)
糖タンパクホルモンです。
重要度:★★★
エストロゲン
注意度:★★★
甲状腺刺激ホルモン
糖タンパクホルモンです。
注意度:★★★
性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)
一般的なペプチドホルモンです。
ホルモンの調節
内分泌系の調節は「ホルモンの血中濃度の調節」 と 「標的細胞におけるホルモン感受性の調節」 に分けられます。
ホルモン血中濃度の調節
内分泌系は 「視床下部」を中枢として「下垂体」→「内分泌線」へと階層構造を作り、最終的に標的器官に作用し目的の生理作用を発揮します。
このような「階層的調節」の中で、下位のホルモン濃度が上位ホルモンの分泌を調節することによって、ホルモンの適正な濃度を維持する「フィードバック制御」が行われています。
最も一般的なのは「負のフィードバック」で、下位ホルモン濃度の上昇に伴って上位ホルモンの分泌を”抑制”することによって、下位ホルモンの血中濃度を一定範囲内に維持しています。
マイナーですが「正のフィードバック」も存在しています。

コルチゾールは上位の「ACTH」の分泌を抑制しているよ!
「下垂体性 副腎皮質機能亢進症」では、このシステムが壊れているんだよね!
診断するためには「高用量デキサメタゾン負荷試験」が必要だよ!
他にもあるよ!
例えば「黄体ホルモン」「成長ホルモン」は数時間周期で規則的に分泌(拍動性分泌)されます。

「拍動性分泌」は受容体の「ダウンレギュレーション」を防いでいるよ!以下で説明しているよ!
また「ホルモン」は1日の中で血中濃度が変動する「 24時間 リズム(概日リズム)」や、季節周期で血中濃度が変化する「年周期 リズム」があります。
たとえば、「メラトニン」は「年周期 リズム」で調整され、季節繁殖に関与しています。
ホルモン感受性の調節
ホルモン感受性の調節のために細胞内では受容体の数を調節しています。

ホルモンが持続的に作用すると、
標的細胞の受容体が変化し、ホルモン感受性が変わるんだよ!
持続的なホルモン刺激は、受容体の数が減少し感受性を低下させます。これを「ダウンレギュレーション」といいます。一方で受容体の数が増加し感受性が高まる場合もあります(アップレギュレーション)。
また、「Gタンパク質共役型受容体」に関しては、刺激が加わることによって、一時的に刺激に対する応答能が低下する受容体の「脱感作 現象」が起こることがあります。
増幅効果とクロストーク
1つのホルモンが数分子の受容体を活性化、
1分子の活性化受容体が多数のセカンドメッセンジャー(SG)を合成し、
1分子のSGが多数のタンパク質リン酸化酵素を活性化させます。
このような増幅過程の影響で、
ほんのわずかなホルモンでも強力な生理作用を引き起こすことが可能になります。
また異なるホルモンでも、共通のシグナル伝達を通じて相互作用するケースも存在します。これを「クロストーク」といいます。
ホルモンの作用機序
ホルモンは「遊離型ホルモン」として血中を移動し、標的細胞の受容体と結合することで作用を発揮します。
受容体の分布はホルモンの種類によって異なり、大きく以下の2種類に分けられます。
ホルモン受容体の種類
「水溶性ホルモン」は一般的に「細胞膜 受容体」に結合し、それによって細胞内のシグナル伝達を介して作用を発揮します。
一方「脂溶性ホルモン」と「甲状腺ホルモン」は「細胞内 受容体」に結合し作用します。

細胞内 受容体は、いわゆる「核内 受容体」だね!
成長と代謝
体が成長するためには「成長ホルモン(GH)」の影響が欠かせません。
下垂体前葉から分泌される「成長ホルモン」は、
肝臓をはじめ多くの組織に働き「ソマトメジン」や「インスリン様成長因子( IGF )」の分泌を促します。
これらの物質が、長管骨に顕著に働き「骨端軟骨」の増殖によって長管骨の伸長が起こります。
加えて伸長が伸びる思春期には、「エストロジェン」が成長ホルモンの分泌を刺激し、また骨端軟骨にも直接作用し骨化を促します。骨端軟骨が完全に骨化すると成長が停止します。
「甲状腺ホルモン」も成長ホルモンと協力的に働き、その作用を増強させます。

上記を考えると、
成長ホルモンの分泌異常で低身長症や巨人症(猫の先端巨大症)になる理由が分かるよね!
代謝
体の成長には骨の延長だけでなく、それに伴う筋肉や皮膚などのタンパク質を増加も同様に必須です。「成長ホルモン」は、血中のアミノ酸をタンパク質に同化させ、それに貢献します。
糖代謝に関しては、「インスリン」と拮抗してグルコースの取り込みを抑制します。「成長ホルモン」が過剰になると「Ⅱ型糖尿病」になる可能性があります。

猫の先端巨大症が糖尿病を罹患していることが多いのはこのためだよ!
脂質代謝に関しては、「トリグリセリド」の分解を抑制します。
ストレス反応
「ストレス反応」に関わるのは、
「交感神経 – 副腎髄質 系」と「視床下部 – 下垂体 – 副腎皮質 系」の2つになります。
ストレスに対して「交感神経 – 副腎髄質 系」が即時的に活性化し、放出されるカテコールアミンによって各器官に交感神経性の反応を引き起こします。
その後、徐々に「視床下部 – 下垂体 – 副腎皮質 系」が活性化し、最終的には糖質コルチコイド(コルチゾール)による防御反応が起こります。下垂体から分泌される「ACTH」は、視床下部の「CRT」だけではなく「バソプレシン(AVP)」によっても刺激されます。
このストレスが長期間に及ぶと、生体にとってはデメリットが増えてきます。

過剰な免疫反応や炎症反応が抑制されるのは、メリットだよね!
このような「ストレス反応」が過剰にならないように「オキシトシン」が分泌され、防御的に働きます。
最後に
「内分泌」の続きは「外皮」です!こちらから!