【獣医師国家試験】内分泌系1〈内分泌系の構造と機能〉

まとめ

本記事は、獣医師国家試験の出題基準を一から解説しようとする一大プロジェクトの「内分泌系」編の第1弾です。

視床下部・下垂体

「視床下部」の神経細胞体は、
「視床下部 ホルモン」と「下垂体 後葉ホルモン」を合成します。

「視床下部 ホルモン」は、
下垂体 門脈」に分泌され「下垂体 前葉」の腺細胞へと伝達されます。

Nekoyasiki
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「内頸動脈」の分枝である上下2本の「下垂体動脈」が「下垂体 門脈」をつくるよ!

中には、軸索を「下垂体 後葉」へと伸ばして血中へ「下垂体 後葉ホルモン」を分泌する「視床下部」の神経細胞が存在します。「下垂体 後葉」は腺組織ではなく、細胞体を視床下部にもつ軸索からなる組織です。

視床下部 ホルモン

「視床下部ホルモン」は 下垂体ホルモン の分泌を促進する「放出ホルモン( RH )」と分泌を抑制する「抑制ホルモン(IH )」に分けられ、そのほとんどが「ペプチドホルモン」です。

Nekoyasiki
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「ドーパミン」はこのなかで唯一「アミノ酸誘導型ホルモン」だよ!

視床下部 ホルモン

  • 放出ホルモン
    • ACTH 放出ホルモン
    • ゴナドトロピン 放出ホルモン
    • 甲状腺刺激ホルモン 放出ホルモン
    • 成長ホルモン放出ホルモン
    • プロラクチン放出ホルモン
  • 抑制ホルモン
    • 甲状腺刺激ホルモン 抑制ホルモン(ソマトスタチン)
    • 成長ホルモン抑制ホルモン(ソマトスタチン)
    • プロラクチン抑制ホルモン(ドーパミン)

下垂体 ホルモン

「下垂体」は「蝶形骨」のトルコ鞍に収容されています。

「下垂体 ホルモン」は、「下垂体 前葉ホルモン」と「下垂体 後葉ホルモン」の2つに分けられますが、上記のように「下垂体 後葉ホルモン」は視床下部の神経細胞によって合成されます。

下垂体 前葉 ホルモン

  • 副腎皮質刺激ホルモン:ACTH
  • 卵胞刺激ホルモン:FSH
  • 黄体形成ホルモン:LH
  • 甲状腺刺激ホルモン:TSH
  • 成長ホルモン
  • プロラクチン

「下垂体 門脈」を介して運ばれてきた「視床下部 ホルモン」は、
「下垂体 前葉」の腺細胞に働き「下垂体 前葉ホルモン」の分泌調節に関わっています。

加えて末梢からの「負のフィードバック機構」によっても制御されています。

Nekoyasiki
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卵胞刺激ホルモン(FSH)」「黄体形成ホルモン(LH)」をあわせて「ゴナドトロピン」というよ!

「成長ホルモン」は肝臓に働き、思春期の骨成長やそれに伴うタンパク質合成に役立っています。

プロラクチン」の最も重要な作用は、「乳房」に作用し、乳腺上皮細胞の増殖を促進するとともに、乳汁成分である乳汁タンパク・乳糖・脂肪酸などの産生を促進します。

下垂体 後葉 ホルモン

  • オキシトシン
  • バソプレシン(ADH)

オキシトシン」は、性行動を促すほか、子宮の平滑筋を収縮させ分娩を助けます。
加えて乳房のまわりにある「筋上皮細胞」を収縮させることで、「射乳反射」を引き起こす働きもあります。

バソプレシン」は体液調整や血圧維持に関与します。

松果体

松果体」は間脳の一部で、「メラトニン」の分泌によって一日おきに繰り返されるリズム「概日リズム(サーカディアンリズム)」を生み出しています。

この体内時計の中心は、間脳の「視交叉上核」という場所にあり、ここから交感神経を介して「松果体」へ刺激が送られ「メラトニン」分泌が促されます。

分泌が最も亢進するのは夜間で、光によって抑制されます。

Nekoyasiki
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メラトニンの分泌を促すために、寝る数十分前には部屋を暗くするといいんだよ!

甲状腺

甲状腺ホルモン

甲状腺」は組織的に一層の「濾胞(上皮)細胞」が作る 「濾胞」と「コロイド」と呼ばれるタンパク質が豊富な液体で満ちた「濾胞腔」から構成されます。「濾胞」内では「甲状腺ホルモン」が作られ周囲の毛細血管へ分泌されます。

この分泌は「視床下部 – 下垂体 – 甲状腺 系」によって制御されています。

間質には「C細胞」が存在し、「カルシトニン」を分泌してカルシウム代謝に関与しています。

作用

① 中枢神経系の発達
② 分化・成長・発達の調節

甲状腺ホルモンの生理作用は2つ、

1つ は中枢神経系の発達や身体成長など分化・成長・発達 の調節、特定の臨界期critical periodのみに生じる。もう1つは,多くの細胞の代

甲状腺ホルモンの分泌

甲状腺ホルモン

  • T4:分泌量が多い
  • T3:分泌量は少ないが生理活性が高い
  • リバースT( rT3 ):受容体に結合しない

「甲状腺ホルモン」は、甲状腺受容体(TR)に結合する「T4」と「T3」、結合しない生理活性が不明な「rT3」が存在します。

血中に放出される甲状腺ホルモンの多くは「T4」で、末梢の脱ヨウ素化によって「T3」と「rT3」が産生されます。

合成

「甲状腺ホルモン」は「サイログロブリン(TG)」が複数もっている「チロシン残基」に「ヨウ素 I」が縮合して作られます。

この反応は「甲状腺 ペルオキシダーゼ(TPO)」によって触媒され、反応は濾胞腔のコロイドで行われます。この反応にはもう一つ「過酸化水素 H2O2」が必要不可欠です。

このようにして作られたTG – 甲状腺ホルモン複合体は、
「濾胞(上皮)細胞」にエンドサイトーシスによって取り込まれ、加水分解酵素により「甲状腺ホルモン」だけ単離され血中に放出されます。

Nekoyasiki
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血中ではアルブミンと結合しているよ!

カルシトニン

「甲状腺」の「傍濾胞細胞(C細胞)」から「カルシトニン」が分泌され、血漿カルシウム濃度を補助的に調節しています。

副甲状腺(上皮小体)

副甲状腺(上皮小体)」は甲状腺の背面に存在し、その「主細胞」によって「副甲状腺ホルモン(PTH)」が分泌されます。「PTH」は「パラソルモン」とも呼ばれます。

「PTH」は血漿カルシウム濃度を調節しています。

副腎

副腎皮質

副腎 皮質 の構造

  • 弓状帯 ー 鉱質コルチコイド
  • 束状帯 ー 糖質コルチコイド
  • 網状帯 ー アンドロジェン

副腎 皮質」は外側から「弓状帯」「束状帯」「網状帯」に分けられ、それぞれ別の脂溶性ホルモンが分泌されます。すべての脂溶性ホルモンは「コレステロール」から作られます。

「視床下部 – 下垂体 – 副腎皮質 系」で調整されています。

01:糖質 コルチコイド

糖質 コルチコイド」で代表的なのが「コルチゾール」や「コルチコステロン」です。

Nekoyasiki
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「コルチコステロン」はげっ歯類で多く出ているよ!

糖質コルチコイドの作用として誤っているのはどれか。

  1. 糖新生の促進
  2. 抗炎症作用
  3. インスリン分泌の促進
  4. タンパク質合成の促進
  5. リンパ球の低下・好中球の増加

4が正解です。

重要度:★★★
タンパク質合成の抑制

タンパク質を作らないことで、たくさんのアミノ酸が余ります。その余った多くのアミノ酸が「糖新生」の基質になります。

02:鉱質 コルチコイド

鉱質 コルチコイド」で代表的なのが「アルドステロン」です。

「アルドステロン」は「Na+チャネル」が増加し「集合管」の管腔側から細胞内のナトリウム Na+ の取り込みが促進されます。それによって基底膜側の「Na⁺-K⁺ ATPase」が活性化しナトリウム Na+ を血管側へ送り出します。

その結果、電気化学的な勾配が変化して受動的にカリウム K+ が尿細管内へと排出されます。

03:性 ステロイド

性 ステロイド」で代表的なのが「デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)」、「DHEA – S」、「アンドロステンジオン」などの「アンドロジェン」です。

これらの「アンドロジェン」が末梢組織にて「テストステロン」に変換され作用します。

Nekoyasiki
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卵巣機能が低下しても、副腎皮質から分泌される「アンドロジェン」から「エストロジェン」を合成することができるよ!

副腎髄質

副腎 髄質」は発生の過程で交感神経節が内分泌器官へと分化した組織であり、「副腎 皮質」によって囲まれています。

脊髄(胸髄)から出た交感神経 節前線維は「副腎 髄質」の「クロム親和性細胞」をバスケット状に囲み、シナプスを形成しています。このようにして刺激を受けると「カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)」が血行性に分泌され、各 効果器【臓器】に作用します。

交感神経系により「副腎髄質」の働きは調節されているため、「自律神経系」の一部として機能しています。

Nekoyasiki
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交感神経系によって調節されているから、「自律神経系」の一部として機能しているよ!

「副腎髄質」への血液供給は独特で、
「副腎 皮質」の毛細血管がそのまま「髄質」へと向かいます。

静脈血には「副腎皮質 ホルモン」が含まれ、「副腎 髄質」の機能にも影響を与えています。

Nekoyasiki
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毛細血管は”有窓性”でホルモンの迅速な分泌と拡散を実現しているよ!

合成・分泌

能動的に細胞内に取り込まれた「チロシン」が一連の酵素反応を経て作られ、小胞に包まれ「開口分泌」によって細胞外へと放出されます。

放出されたカテコールアミンは、トランスポーターによって細胞内に取り込まれ「モノアミン酸化酵素」や「カテコール – 0 – メチル基転移酵索」によって分解されたり、再利用されます。

カテコールアミンの分解酵素はどれか?

  1. モノアミン酸化 酵素(MAO)
  2. チロシン水酸化 酵素
  3. ドーパミンβ水酸化酵素
  4. フェニールエタノールアミン – N – メチル基転移 酵索
  5. カテコール – 0 – メチル基転移 酵索(COMT)

1. a, b 2. a, e 3. b, c 4. c, d 5. d, e

2が正解です。

重要度:★★
チロシン水酸化 酵素

チロシンからドーパを合成するための 律速酵素 になります。

重要度:★★★
ドーパミンβ水酸化酵素

ドーパミンからノルアドレナリンを合成するための酵素です。

重要度:★★★
フェニールエタノールアミン – N – メチル基転移 酵索

ノルアドレナリンからアドレナリンを合成するための酵素です。

生殖器〈卵巣〉

01:エストロジェン

エストロジェン」の合成は「視床下部 – 下垂体 – 卵巣 系」によって調節されています。

黄体化ホルモン(LH)」の作用を受けて、「卵胞」上皮の卵胞膜細胞でまず「アンドロジェン」の合成が起こり、さらに隣接する顆粒膜細胞で「アロマターゼ」処理を受けて分泌されます。

Nekoyasiki
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「17β―エストラジオール」「エストロン」「エストリオール」の3種のホルモンの総称だよ!

通常時は、上位の視床下部や下垂体を「負のフィードバック」をしていますが、「排卵」直前にはむしろ「正のフィードバック」によって「GnRH」「LH」「FSH」の分泌を著しく促進し(LHサージ)、「排卵」が誘起されます

「エストロゲン」は「卵巣」と「胎盤」で主として合成・分泌されていますが、「副腎皮質」や「精巣」でも少量合成されます。

エストロジェンの作用として誤っているのはどれか。

  1. 子宮内膜を増殖させる。
  2. 副生殖器官の発育と機能を促進させる。
  3. オキシトシンの反応性を高める。
  4. 頸管粘液の分泌を促進する。
  5. 乳腺の発達を抑制する。

5が正解です。

重要度:★★★
乳腺の発達を促進する。

乳汁分泌に対しては抑制的に働きます。

02:プロジェステロン

プロジェステロン」は、妊娠維持に関与するホルモンとして知られています。「卵巣(黄体)」と「胎盤」で主として合成・分泌されていますが、「副腎皮質」や「精巣」でも少量合成されます。

妊娠中は「視床下部 – 下垂体 – 卵巣 系」の「負のフィードバック」によって、LH・FSHの抑制とエストロジェンの発情が抑制され妊娠が維持されます。

基本的に「プロジェステロン」は「エストロジェン」と協力的に働きますが、分泌量の不均衡が生じると拮抗的に働きます

プロジェステロンの作用として誤っているのはどれか。

  1. 受精卵の着床
  2. 体温の低下
  3. 妊娠の維持
  4. 子宮運動を抑制
  5. 発情誘起を抑制

2が正解です。

重要度:★★★
体温の上昇

精巣

テストステロン」の合成は、
「視床下部 – 下垂体 – 精巣 系」の「負のフィードバック」作用によって調節されています。

胎生期から精巣の「ライディッヒ細胞」で分泌され、「卵胞刺激ホルモン(FSH)」と協調して「精巣」の「セルトリ細胞」に作用し「精子」形成を促進します。加えて「精巣上体」での精子成熟にも関与しています。

膵島

膵臓」は消化に関わる外分泌機能だけではなく、内分泌作用も持ち合わせています。

「膵臓」には外分泌細胞だけでなく、数種類の内分泌細胞が密集した「膵島ランゲルハンス島)」をつくり、散在しています。それぞれの細胞は、別々のペプチドホルモンを分泌しています。

ホルモンの種類

  • A細胞(α細胞) – グルカゴン
  • B細胞(β細胞) – インスリン
  • D細胞(δ細胞) – ソマトスタチン

01:グルカゴン

「グルカゴン」は低血糖時に分泌が促進し、異化の亢進(糖新生)によって血糖値を上昇させます。交感神経、副交感神経、いずれの刺激でも分泌が促進されます。

02:インスリン

インスリン」は主に血糖値を下げ、「同化」の促進に役立っています。

同化 の具体例

  • グリコーゲンの合成
  • トリグリセリドの合成
  • タンパク質の合成
Nekoyasiki
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「インスリン」の分泌が低下すると「異化」が亢進して「糖新生」によってグルコースが作られるよ!

膵臓B細胞は「GLUT2」からグルコースを取り込み「インスリン」を分泌し、「01:肝臓」「02:骨格筋」「03:脂肪組織」が代表的な標的臓器になります。

インスリンの結合によって
「01:肝臓」では「GLUT2」を介してグルコースを取り込み、「グリコーゲン」という形で貯蔵、
「02:骨格筋」「03:脂肪組織」では「GLUT4」によってグルコースを取り込み「筋グリコーゲン」や「トリグリセリド」の形で貯蔵を行います。

これらの標的臓器にグルコースが取り込まれることによって、食後の血糖値は定常状態に戻ります

Nekoyasiki
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「GLUT4」は、インスリンの結合によって細胞膜上に移動してくるんだったね!

それ以外の多くの細胞は「インスリン」と”非”感受性に「GLUT」によってグルコースを取り込み「解糖系」によって多量のATPを作ります。

インスリン分泌が抑制されるのはどれか。

  1. ソマトスタチン
  2. インクレチン
  3. 迷走神経の刺激
  4. 血糖値の上昇
  5. 交感神経の刺激

1. a, b 2. a, e 3. b, c 4. c, d 5. d, e

2が正解です。

03:ソマトスタチン

ソマトスタチン」は、血中や組織で速やかに分解消失するため、近傍の標的細胞に限定で生理学的な作用引き起こします。膵臓のD細胞だけでなく、胃でも分泌され「ガストリン」「セクレチン」

その他のホルモン

胎盤

胎盤から分泌されるホルモンは以下にまとめました。

同化 の具体例

  • 人 絨毛性 性腺刺激ホルモン(hCG)
  • 馬 絨毛性 性腺刺激ホルモン(eCG)
  • タンパク質の合成

人絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)」は、妊娠初期の尿中に多量に出現するホルモンで、人の「栄養膜細胞」で合成されます。

「hCG」は「黄体」を刺激し「プロジェステロン」の分泌を促すことで、妊娠の維持に関与します。その作用は「LH」によく似ています。その作用を応用して、獣医領域では「排卵誘起」に使用されています。

Nekoyasiki
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「hCG」は人間の妊娠判定に用いられるよ!キットが市販でも売っているよね!

馬絨毛性性腺刺激ホルモン(eCG = PMSG)」は胎子由来の「絨毛膜細胞」から合成・分泌され、馬では「LH」作用を、他の動物では「FSH」作用を示します。

牛では”過剰”排卵処置に利用されます。

Nekoyasiki
Nekoyasiki

「eCG」は分子量が大きく尿中に排泄されないんだよ!人間みたいに簡易検査できたらいいのに、、、

プロジェステロン」や「エストロジェン」は一般的に卵巣から分泌されますが、胎盤からも分泌されます。

妊娠維持に欠かせない「プロジェステロン」は、「牛」「馬」「羊」では一定の妊娠期間を過ぎると胎盤からの分泌に移行するため、黄体を切除しても妊娠の維持が可能です。

胎盤性ラクトジェン」は「栄養膜細胞」で合成・分泌され、人・牛・羊・山羊・ラットなどで確認されています。

その作用は、
「成長ホルモン」様の胎子の発育促進と、「プロラクチン」様の乳腺刺激が挙げられます。

肝臓

肝臓から主に分泌されるのホルモンは、「成長ホルモン」からの刺激をうけて分泌される「IGF -Ⅰ」です。これは、思春期の骨成長やそれに伴うタンパク質合成に役立っています。

心臓

心臓から分泌されるホルモンには「ANP」があります。

腎臓

腎臓から分泌されるホルモンとして重要なのは「レニン」「ビタミンD」です。

「レニン」は体液保持・血圧維持に貢献し、「ビタミンD」は血漿カルシウム・リン濃度を調節しています。

消化管

消化管から分泌されるホルモンは、たくさん存在しています。あまりにも多いため、以下の記事でまとめています!

胸腺

胸腺は、T細胞の分化・成熟に関わって免疫機能に大きく貢献しています。

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