本記事は、獣医師国家試験の出題基準を一から解説しようとする一大プロジェクトの「神経系」編の第1弾です。
大脳
「大脳」は、左右2つの「大脳半球」に分かれています。各大脳半球には 「側脳室」 が存在し、内部には神経線維が広がり、情報の伝達や処理を行います。
大脳の構造
大脳は以下の主要な部分から構成されています。
大脳 基本構造
「大脳皮質」は大脳の表面を覆う最外層で、情報処理・認知・運動機能などを担当する神経細胞層です。出っ張る部分を「大脳回」、溝を「大脳溝」 といい、神経細胞層を折り畳みコンパクトに収納しています。

灰白質は神経細胞領域、白質は神経線維領域だよ!!!
「皮質下白質(大脳 髄質)」は、大脳皮質と大脳基底核をつなぐ重要な経路を含む領域です。
「大脳基底核」は、運動制御・学習・行動調節に関与しています。
「嗅脳」は「嗅球」を含み、嗅覚情報の処理を行っています。「脳梁」は、左右の大脳半球を連結し、情報を交換する白質構造を持っています。
大脳皮質の機能的区分
大脳皮質は いくつかの大脳葉 に分類され、それぞれ異なる機能を担います。
大脳葉 | 主要な機能 | 境界を作る構造 |
前頭葉 | 運動・意思決定・計画・思考・感情制御 | 中心溝(ローランド溝) により頭頂葉と分離 |
頭頂葉 | 体性感覚・空間認識・注意 | 中心溝の後方、外側溝の上 に位置 |
側頭葉 | 聴覚・記憶・言語 | 外側溝(シルビウス溝) により前頭葉・頭頂葉と分離 |
後頭葉 | 視覚情報処理 | 頭頂後頭溝 により頭頂葉と分離 |
これら4つの大脳葉の他に、補足的な領域に「島皮質」や「辺縁葉」があります。特に「辺縁葉」は情動・記憶・本能的行動に関与する「海馬」「帯状回」「海馬傍回」を含みます。
大脳皮質の組織学的分類
大脳皮質は、発生学的・層構造の違い により以下の3つに分類されます。
「大脳皮質」は外側から「分子層(網状層)」「外 顆粒層」「外 錐体 細胞層」「内 顆粒層」「内 錐体 細胞層」「多形 細胞層(紡錘 細胞層)」の6層構造になっています。これを「等 皮質」といいます。
また6層構造を持たない「古 皮質」や「原 皮質」は合わせて「”不”等 皮質」と呼ばれます。
大脳基底核
「大脳基底核」は、終脳の基底部にある 大きな神経核群で以下の4つの神経核から構成されています。
大脳 基底核
「大脳基底核」は大脳皮質の広い領野から入力を受けて大脳基底核で処理された情報は、一部は脳幹に下行し、大部分は「視床」を介して再び 大脳皮質(特に前頭葉)に戻る「大脳皮質 – 大脳基底核ループ」を形成している。
このように「大脳基底核」は「小脳」とともに大脳皮質の活動を制御しています。

「黒質」から出るニューロンは神経伝達物質として「ドーパミン」を使って運動を制御する特徴的な部分だよ!ここが脱落・縮小する疾患を「パーキンソン病」というよね!