本記事は、獣医師国家試験の出題基準を一から解説しようとする一大プロジェクトです。
獣医学の基本的事項の「Ⅱ生殖と行動」編の第1弾です。
卵子の形成と卵胞の発育
卵子の形成
基本的な流れは
「卵祖 細胞」→「一次 卵母細胞」→「ニ次 卵母細胞」→「卵 細胞(卵子)」となります。
胎児として生まれてくるときには、
すでに「卵祖細胞」が体細胞分裂を終えて「一次卵母細胞」となり、さらに一回目の減数分裂の「第一分裂 前期」の中途半端な状態で存在します。

「第一卵母細胞」は新しく作られないから、僕らと同じように年を取っていくんだね!
出生時が最も数が多くて、成長に伴って徐々に減っていくんだよ、、、
卵胞の発育
まとめ
胎児期〜出生期になると、「卵巣」内に存在する「一次卵母細胞」は、単層の「卵胞 上皮細胞」に包まれて「一次卵胞」を形成します。特に、初期のしょきで扁平で単層の卵胞上皮細胞で包まれている場合を「原始卵胞」と呼びます。

卵巣では「一次卵母細胞」が「一次卵胞」の状態で存在しているよ!
「春機発動」が起こると性周期ごとに一定数の「一次卵胞」が発育し、「卵胞上皮細胞」が増殖します。この増殖して重層化した「卵胞上皮細胞」を「顆粒膜 細胞」と呼び、「ニ次卵胞」が作られます。
「二次卵胞」になると、卵母細胞と顆粒膜細胞の間にゼリー状の「透明帯」が作られ始めます。

この「透明帯」は卵割に伴った一つ一つの細胞をまとめるために必要なんだって!
この透明帯を破って出ることを「孵化(ハッチング)」というよ!
卵胞上皮細胞の増殖が絶えず行われ、徐々に「卵胞液」で満たされた「卵胞腔」が作られます。このような卵胞を「三次卵胞(胞状卵胞)」と呼びます。
この頃になると、「一次卵母細胞」は一部に顆粒膜細胞に包まれながら「卵胞腔」の方向へ離れていき「卵丘」を構成します。「卵丘」をつくる「卵丘細胞」は「透明帯」に突起と伸ばして卵母細胞とのコミュニケーションを取り合っています。このような「透明帯」にみられる構造を「放線冠」といいます。
最終的に排卵局前の卵胞は「成熟卵胞(グラーフ卵胞)」と呼び、下垂体からのLHサージにより減数分裂が再開され「二次卵母細胞」となり「透明帯」とともに排卵されます。

精子は透明帯を通過して卵母細胞まで侵入するよ!
取り残された「顆粒膜細胞」は、その後「黄体」を形成します。
卵子の成熟と排卵
動物がある程度成長して「春機発動」を迎えると、性ホルモン(LHサージ)の影響により、途中で止まっていた「減数分裂」が再開して「二次卵母細胞」の「第二分裂 中期」で再び止まります。
この状態で「排卵」が起こります。
2回目の減数分裂である「第二分裂」が再開されるのは、「卵管(膨大部)」での「精子」の侵入を受けてからになります。
加えて、
「一次卵母細胞」から「二次卵母細胞」形成の過程で1つ、
「二次卵母細胞」から「卵子細胞」への過程で1つ「極体」を放出するため、
選りすぐりのたった1つの優秀な「二次卵母細胞」しか形成されないのも特徴です。

オスでは、1つの卵祖細胞から4つの精子ができるよね!
精子の形成と成熟
基本的な流れは卵細胞を同じで、
「精祖 細胞」→「一次 精母細胞」→「ニ次 精母細胞」→「精 細胞(精子)」となります。
「精祖細胞(精原細胞)」は「曲 精細管」の基底膜側に張り付くように存在しており、絶えず「体細胞 分裂」によって「一次精母細胞」になります。
その後は「減数分裂」により分裂していきます。
一回目の「減数分裂」によって「二次精母細胞」ニ回目の「減数分裂」によって4つの「精細胞(精子)」と分裂します。
精子の成熟
セルトリ細胞内で作られた「精子」は、
精細管から「精巣上体 尾部」まで移動し、射精まで貯蔵されます。
移動する過程で「運動能力」や「受精能力」も獲得し成熟します。
精子の形態と機能
精子の形態
「精子」は、大きく分けて「頭部」と「尾部」に区分できます。「尾部」はさらに「頸部」「中間部」「主部」「終末部」に分けられます。
「頭部」の先端である「先体」には、タンパク質分解酵素である「ヒアルロニダーゼ」や「アクロシン」が含まれ「卵子(第二卵母細胞)」の「透明帯」を通過するときに必要になります。
また「頭部」の形態は動物により異なり、例えばマウスやラットの頭部は鎌形、鶏の頭部は湾曲しています。
「頸部」には「中心体」が存在し、ここから尾の末端まで「軸糸」が伸びています。
「中心部(中片部)」は、軸糸の周辺を「ミトコンドリア鞘」が取り巻き、精子のエネルギー供給に関わっています。
「尾部」の主体は鞭毛や線毛と同じ「微細管」からなる「軸糸」であり、主部までは尾鞘で包まれていますが、途中の終部から軸糸が露出しています。この軸糸をスクリューのように回転させることによって、精子の運動が可能になります。
射精
オス動物では、性的興奮によって「勃起」が、雌への「乗駕」および「陰茎挿入」により、陰茎への刺激が「射精反射」を引き起こし「射精」が起こります。
勃起
「勃起」には大きく分けて2つのタイプがあります。
「血管筋肉型」の陰茎を持つ動物では、性的刺激により「海綿体」に大量の血液が流入して膨張し、また線維性の「白膜」や「陰茎筋膜」が緊張することで陰茎が硬くなります。
同時に「球海綿体筋」「座骨海綿体筋」が反射的に収縮すると、静脈の血液の還流が抑制され、血液がうっ血し、勃起が持続します。特に、馬や犬では「海綿体」が発達しているため、陰茎の「膨張」が顕著です。
一方、「弾性線維型」の陰茎を持つ動物では、海綿体の発達が乏しく、「白膜」が非常に厚いため、勃起による陰茎の膨張はみられません。その代わり、「陰茎S状曲」がまっすぐに伸長することで陰茎が硬くなり、「包皮外」へ突出します。
射精
「射精」は体の反射反応です。
メスの膣内に挿入することによる「陰茎」先端への知覚刺激が生じると、「腰仙部」にある「射精中枢」に伝わり「副生殖器」やその周囲の筋肉が律動的に収縮し、その結果「射精」が起こります。
この収縮の波は、「精巣輸出管」→「精巣上体」→「精管」→「副生殖腺」→「尿道」へと順に伝わっていきます。
この一連の収縮(射精にかかる時間)は動物ごとで異なり、反芻類では1回、それ以外の動物では複数回起こります。

反芻類では直腸から腰仙部を電気刺激することで「射精」を促せるよ!
射精を誘導するための「陰茎」への知覚刺激は、以下のように動物種によって異なります。
- 牛では「温覚」が重要
- それ以外の動物では「圧覚」や「摩擦」がより重要
牛・馬では「人工膣法」が、豚や犬においては「用手法」が一般的です。
射精の種差
「陰茎」の挿入と、射精の過程には種差があります。以下にまとめました。
まとめ
多くの動物の自然交配おいては、
一般的に膣内に射精されますが、馬は例外として子宮内に射精されます。
また牛では膣内射精の動物であっても、人工授精の場合は「子宮内」に注入されます。
最後に
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